心霊特捜 今野敏
読んでほしい度 ☆☆☆ 読みやすさ ☆☆☆☆
今野敏さんの作風は根っこがすごくやさしい感じがします。
刑事ものでも殺人物でも。
R特捜班は神奈川県警の本部に所属する特捜班。
R特捜班が担当するのは、いわゆる『霊』が関係した事件。
班員はみなが霊感があり署内から集められた精鋭?であり、霊に対しどこか敬うような気持ちを持って接しているようにみえる。
6つの事件が短編集のように書かれているこの作品ですが、一話目のお話だけ少し。
マンションのエレベーターで見つかった遺体。
病死か?と思われた遺体だが、よく調べてみると首筋にやけどの跡が。
普通の刑事たちが必死で死因を考える中、R特捜班が推理を口にする。
それは、そのエレベーターで過去に亡くなった幽霊さんが教えてくれたヒントからの発想であったのだが、幽霊は話さない、ではどうやって教えられたんでしょう?
ここで今野敏作品のほわっとするやさしさが・・・。
6時間後に君は死ぬ 高野和明
読んでほしい度 ☆☆☆ 読みやすさ ☆☆☆☆
短編集です。
紹介するのは表題作 6時間後に君は死ぬ。
もうすぐというか、もうあと6時間後に25歳になる原田美緒は、センター街の交差点で大学生くらいの若い細身の男から「ちょっといいですか」と声をかけられる。
最初はナンパかなと思い軽くあしらっていたが、男は真剣な顔で題名の言葉を美緒に告げた。
そんなもの信じるわけないでしょう、と思っていた美緒だが、彼の予言や話を聞いているうちにだんだんと気持ちが変わっていき、刻々と過ぎていく時間に怯えながらも、二人で自分を殺す犯人を捜しだす。
50ページしかない小説なので、深い謎もトリックもなくすんなり片がついてしまいますが、重い長い小説に疲れたときに読むのに丁度いい短編集です。
13階段 高野和明
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読んでほしい度 ☆☆☆☆☆ 読みやすさ ☆☆☆
死刑制度を扱った作品です。
死刑判決を受けた樹原亮は『死神』と称されるいつなのか分らない死刑執行日に、死刑囚を迎えに訪れる刑務官に怯えながら過ごす日々、冤罪であるのに。
そんな彼の無実を晴らそうと、死刑制度に反対する匿名の篤志家からの依頼を受けた弁護士の指令で動き出したのは退職を決意した刑務官・南郷
南郷は自分の勤務する刑務所から仮出所したばかりの三上純一を相棒に誘う。
致死傷害罪で服役していた純一を選んだことに、何か意図があってのことだろうと、話の序盤から推測されるが、事件は純一の殺害した男の父親も絡まり複雑になっていく。
自分の親しい人や家族が殺されたら、その犯人を殺してやりたいと望んでしまうのは人間の常であろう。
だが実際に自分の手で殺害することなどできない。
だから被害者遺族は死刑を望むのだ。
法の下に死刑に。言葉ではきれいな正義であるが、しかし実際に誰かが、被告人の首を絞めなければならない。
その殺人と何ら変わらぬ重苦しい儀式を行わなければならないのは、正義を愛し犯罪者を更生させ世の中に戻したいと強い願いを抱いた刑務官たちである。
私は死刑制度には賛成派である、が、死刑執行に対しもうちょっと方法はないのかなと深く考えさせられる作品です。ぜひ読んでほしい。
天使がいた三十日 新堂冬樹
読んでほしい度 ☆ 読みやすさ ☆☆☆☆
新堂冬樹さんの作品は、黒と白に分類されます。
どす黒い、読んでいて嫌な気持ちになるくらいの黒話と、純恋潔白、真っ白な気持ちを思い出す白話
そして、とても素晴らしい作品と、なんだこれ?って作品も真っ二つに分類されます。
4人いるんじゃないの?作者って感じ。
一年前に30歳の妻・夏乃に先立たれた男が、生きがいとしていた音楽の仕事も家も生きていく気力も何もかもを亡くしていた時に、食べるためだけに見つけた仕事の配達先で出会った犬に奇跡を感じる話。
犬の名はマリー
マリーの立ち居振る舞いのすべてに夏乃の姿を思い、夏乃が自分のもとに姿を変えて帰ってきてくれたのでは・・・となっていく話
感情移入できないありきたりなストーリーで、途中で読むのをやめました。
パズル 山田悠介
[rakuten:book:12080185:detail]
読んでほしい度 ☆☆ 読みやすさ ☆☆☆☆
山田悠介さんの作品は、児童書を卒業したくらいの年齢の、大人文庫デビューにぴったりです。
湯浅茂央の通う私立徳明館高校は、極めて厳しい選択試験を潜り抜けてきた秀才だけが全国から集まるエリート校。
その中でも茂央のいる三年A組は、全600人の入学者の中から特に学力の高い者だけを集めたクラスである。
厳しい担任の追い込みによって、クラスの中の下位の生徒はどんどん辞めていく。
現在残っている15人は、お互いにクラスメートであり友人であるなどという感情はなく、皆が敵同士だと思っている。
そんなある日、自らを『パズル』と名乗るグループの覆面をかぶり銃を持った犯人が学校に侵入。
担任の安田先生を人質に取り、三年A組の15人だけを残してほかの生徒職員を学校から出すように命令。
そしてその15人に学校中に隠した2000ピースのパズルを制限時間内に探すように指示。
しょうがなくそのゲームをやり始める生徒たちだが・・・
最初から薄々感ずいてはいたが、何ピースか集まってパズルの図柄がわかったところで犯人が誰なのか、と目的が何なのかが大人ならすべてわかってしまいます。
でも中学生の息子はすごく面白いと集中して読んでました。
残穢 小野不由美
inoue
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読んでほしい度 ☆☆☆☆ 読みやすさ ☆☆☆
小野不由美さんの作品は大体怖いですが、この話はあまりないタイプのホラー小説で、大の大人が本当にトイレに行けなくなるというか、天井を見上げられなくなります。
ドキュメンタリーの感じで、住んでいる部屋についている『穢れ(穢れ)』の謎を
追い、その建物の過去のことから、最終的には土地についてまで調べていくのですが、実際にどこにでもありそうでなさそうなところが実に怖い。
この本を自宅の本棚に置いておきたくない気持ち。
映画化された話にはこういうの良くある気もしますが、そんなんじゃないホラー小説だと思って手に取った私には、結構な怖さでした。
この本は、良いって人と何も面白くないって人が両極端に別れます。
私は面白かったけれど、二度とは読みたくないかな。
裁判員 もうひとつの評議 小杉健治
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読んでほしい度 ☆☆☆ 読みやすさ ☆☆☆☆
小杉さんの作品は、字数が少ないものが多く読書初心者にも読みやすいです。
会社員の木原一太郎は裁判員に選出されたが、それはちょうど別居中の妻から離婚を求められ、精神が乱れている時であった。
被告人は29歳の青年 幼い頃の自宅の火事で左の額と背中にかけてやけどを負い、そのあとが残ってしまったことで、もともと大人しい性格の上にとても内向的になってしまっていたが、出会い系サイトで出会った美しい女性とその母親を刺殺たという。
検察側の出した物証と本人の自白をもとに立件されたが、一転無罪を主張し始めたというところで裁判が始まる。
現実に裁判員制度は平成21年から始まり、地方裁判所ごとに管内の選挙管理委員がくじ引きで無作為に選んだ方が任命されます。裁判所が認める正当な理由がない限りは辞退できません。もしも自分が選ばれたらと思うと、興味も多いにあるけれど、やっぱり人の生死や生活を左右する判断をなさねばならぬのは怖い。
木原も殺人事件の犯人なのか冤罪なのかが分からない被告人に対し、妻のことを一時忘れて放置し、真摯に向き合っていく。
結局は裁判員の多数決で有罪となるのだが、裁判員の一人が言った言葉が印象的
「裁判員裁判は、言葉は悪いが一種のゲームなんだ。真実を明らかにする神聖な場ではない。黒か白かを決めるゲームだ。」
この言葉の意味が気にかかったら、どうぞ読んでみてください。